妊娠前と妊娠中の葉酸

2016-11-20 15:02 JST by kcrt

 

妊娠前と妊娠中の葉酸 (folic acid)

葉酸はビタミンB類の一種で、DNAの生合成に強く関わっています。

日本人の食事摂取基準(2015年版)によると成人(18~29 歳)の推定平均必要量は200μg/日、推奨量は、240μg/日です。ただし、妊娠中は需要が増大するので、さらに240μg/日(付加量推奨量)を追加しましょう。

妊娠中の葉酸の補充が重要である理由は、神経管閉鎖障害が予防できるからです。

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(Public domain, created by Abitua, cited from Wikimedia commons.)

神経は最初は図の一番上のように、シート状になっています。このシートが折れ曲りチューブ状になることによって神経管(紫色部分)を作ります。葉酸が不足していると、ホモシステインという物質の濃度が高まることにより、このチューブを作る行程がうまくいかない( = 神経管閉鎖障害 ) ということがわかっています。

この神経管が作られる時期は受胎後およそ 28 日頃と妊娠の早期に起こりますので、妊娠してから摂取するのではなく、少なくとも妊娠1か月以上前には摂取を開始する必要があります。そのため、現実的には妊娠を計画した時点で葉酸補充を開始する必要があります。

葉酸はその名の通り緑黄色野菜などに多く含まれています。ただし、葉酸は加熱に弱い・水溶性であるために茹で汁に溶出する・推奨摂取量が多い・妊娠後も継続的に摂取する必要がある、などの理由があるため、食事に加えてサプリメントなどでの補充が勧められます。

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市販されているサプリメントが薬局などで簡単に手に入ります。

「天然葉酸」「合成葉酸」といった表記を見かけることがありますが、バカ高い「天然葉酸」を売りたい人が言っているだけなので気にする必要はありません。「天然であること」と「安全であること」は何の関係もありません。天然でも危険なものはたくさんありますし、合成でも安全なものはたくさんあります。

また、神経管閉鎖障害の予防のためには、妊娠3ヶ月までの補充が勧められていますが、そのほかにも葉酸補充は口唇・口蓋裂や先天性心疾患・自閉症の予防に関係しており、その後も補充が勧められます。

ただし、過剰摂取には要注意です。厚生労働省は耐容上限量算定の参照値を18μg/kg 体重/日 (50kgの方で900μg/日)に設定しています。

後期に葉酸をサプリメントで摂ることで喘息が増えるとの報告もありますが、こちらの報告は、補充に葉酸サプリメントを使っていた人は、サプリだけで2900μg/日(中央値)と日本と比べて著しく多く葉酸を取っていますので、そのまま日本のサプリと当てはめるのは無理があります。また、「関係がなかった」としている報告もその後でており、こちらについては過剰に心配しすぎるのはお勧めしません。

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