TORCH症候群

1999-01-01 00:00 by kcrt

 

TORCH 症候群

  • Toxoplasma
  • Rubella
  • Cytomegalo virus
  • Herpes
  • Others

  • 胎児への感染(infected) と 胎児が発症(affected)を区別して考える必要がある
  • 診断には以下が重要
    • ペア血清で抗体が有意に変化(4倍以上)
    • IgG avidity 低値
    • 羊水・胎児血の検査(PCR陽性、胎児血IgM陽性など)

Toxysoplasma

  • 生肉(牛・豚・鶏など)を摂る食生活や最終宿主であるネコ科動物の糞便中のオーシストが関連
    • ネコ科動物のオーシストの排泄は初感染後の数週間(猫全体の数%)に限られている。飼い猫は室内猫で肉を食べなければ感染の可能性は少ないが、糞便を触る時は必ず手袋を触るか、他の誰かに処理して貰う。糞便中のオーシストが成熟オーシストになるのには数日かかるため、こまめに処理を行うのが大切。野良猫や室外飼いの猫には触らない。
    • シストが含まれている生肉が問題となるが、加熱するとシストは壊れるため肉類は充分火を通すこと。
  • 妊娠が進むほど児の感染率は上昇
    • -10w : 2%
    • 31-34w : 67%
  • 重篤な先天感染(中枢神経障害)は妊娠初期の感染に多い
  • IgG(+), IgM(+) -> 急性感染の可能性が高い
    • さらなる検査としては羊水中PCR(B1 gene), 臍帯血IgM, PCRがある。
    • 羊水PCR診断での胎児感染の診断感度は92.2%、陰性的中率98.1%、陽性的中率100%とされており、精度は高いが偽陰性も起こりうる検査
  • IgG(+), IgM 弱陽性 -> persisntent IgM(過去の感染)の可能性もあり
  • 胎児エコーで側脳室拡大・脳内石灰化・腹水の有無などもチェック。

Rubella

  • 先天性風疹症候群:眼症状(白内障)・聴覚障害・先天性心疾患
  • 感染しても1/4は不顕性感染であり感染したという自覚がないまま先天性風疹症候群を発症することもある
  • 妊娠中の初感染した場合に胎児への影響が出る。
    • 再感染では胎児異常は非常に稀(皆無ではない)
  • 発症頻度は妊娠週数が進むにつれて減少
    • 11w未満に胎児感染を起こした場合、ほぼ全例に発症
    • 11-12w: 50%
    • 13-14w: 35%
    • 15-16w: 20%
    • 20w以降では先天性風疹症候群は非常に稀
  • 検査: 羊水PCR, 胎児血PCR, IgM
  • 母胎感染直後では検出されないこともあり4週間前後経過してからが望ましい
  • ただし、上記=先天性風疹症候群ではないため、陽性であっても異常のない胎児が含まれる

Cytomegalo virus

  • CMVも参照
  • 一般成人の抗体保有率は現在70%程度まで減少してきている
  • 本邦において症候性の胎内感染が起こる頻度は全妊娠の約0.4% -> 全例にスクリーニングは行っていない
    • 未感染母体の初感染
      • 胎内感染の確率 30-50%, 症候性感染の確率 -20%, 乳幼児死亡の確率 感染時の10-20% 1
    • 帰還船母体の再活性化
      • 胎内感染の確率 0.2-2%, 症候性感染の確率 10-15% 2
    • 母体の皮疹や肝障害・胎児のエコー所見(IUGRなど)がある場合はウィルス学的検討を行う。
  • ヘルペス属であり母体が抗体を持っていても再感染・再活性化を繰り返し胎児感染も起こる。ただし、再感染の場合は初感染に比べて胎内感染の頻度は低く重症例も少ない。
  • 母体CMV特異IgGのセロコンバージョン(抗原の陰性化と抗体の陽性化)があれば新規の感染である。3
  • 母体CMV IgMの存在はあまり有効でない。4
    • 感染した母の75-90%程度しか陽性にならない
    • 急性感染の後1年間または再起感染でも陽性となる。
    • persistent IgM(長期にIgMが陽性となる)例もある
  • IgG avidityのチェックは有用(UpToDate))
    • avidity >65%なら初感染から6か月経っていると考えられる
    • avidity <30%ならこの2~4ヶ月の感染と考えられる。
    • low IgG avidity と CMV PCR (+) or 1st trimesterのIgG低値は母子間感染と強い関係がある。
  • 胎内感染の診断は羊水中や新生児早期(3生日以内; UpToDateでは3週間以内)の尿を用いてPCRする。出生時の臍帯血でIgM, PCR, ウィルス分離などを行う。
    • ただし、羊水PCRは母体血混入で陽性になってしまうことがあり、specificity 63%, positive predictive value 29%という報告もある。5
    • 臍帯血のIgMは先天性感染児の半分でしか陽性にならない6
  • 治療 7
    • 先天性CMV感染時に対してGCVの静注(6週間)が聴力予後・精神運動発達を改善する。
    • 長期静注は患児・家族への負担も大きいため、VACVの投与も行われるようになってきた。
    • GCV 6mg/kg/dose x 2, for 6weeks
      • 500mg/V: 13718JPY, 6w(6kg)で576136JPY
    • VGCV 16mg/kg/dose x 2, for 6weeks
      • 外来でも可
      • 459mg/T: 2943JPY, 6w(6kg)で54934JPY
      • エビデンスは少ない
  • 妊娠中に再発を繰り返している場合は36週以降に母体がACV内服を行う方法もあり。

Herpes virus

  • 外陰部から産道にかけての単純ヘルペス感染症が分娩時あるいは破水後に児に経産道感染を起こす
  • 全身性ウィルス血症 -> 中枢神経・皮膚感染症、多臓器不全
    • 多臓器障害型は死亡率50%以上。生存しても50%以上に中枢神経障害や視力障害などを残す
  • 診断は局所からのウィルス分離・培養が有効
  • 新生児ヘルペスの発症率 -> 初感染: 50%, 再活性化: 1-3%
  • 原則は病変があれば帝王切開
  • 分娩後5日以内にヘルペス病変が出現した場合も、新生児への垂直感染の可能性を考慮する

Palbo B19 virus

  • 伝染性紅斑(リンゴ病)の原因ウィルス
  • 妊娠中の感染は
    • 初期: 胎児死亡
    • 中期: 赤血球性への親和性から貧血->胎児水腫
  • 妊婦が感染した場合、1/4が胎児感染, 10%が胎児死亡・胎児水腫となる
  • パルボウィルスによる胎児水腫は胎児輸血の適応となる
  • 診断は母体の典型的な発疹と特異的IgM
  • 不顕性感染も多く、胎児水腫では鑑別診断にパルボウィルス感染を挙げることも重要

HIV virus

  • 無治療の場合、15-25%に垂直感染が成立
  • 経胎盤・経産道・経母乳感染
  • RNAコピー数と垂直感染確率が相関
  • 予防として:抗ウィルス薬+selective C/S
  • 授乳は禁忌
  1. 日本未熟児新生児学会雑誌 25(1): 7-12 2013 

  2. 日本未熟児新生児学会雑誌 25(1): 7-12 2013 

  3. UpToDate 

  4. UpToDate 

  5. 産婦人科ガイドライン 2011 

  6. 日本未熟児新生児学会雑誌 25(1): 7-12 2013 

  7. 日本未熟児新生児学会雑誌 25(1): 7-12 2013 

At your own risk!

この文章に掲載されている内容は、個人のメモとして過去に作成された物であり、内容に関して保証はありません。

Sorry, private only...

このページの内容は、個人のメモとして利用するために作成された物で、一般に対して公開しているものではありません。また、記載についてアップデートされているとは限らず、現状にそぐわない古い情報が含まれている可能性があります。
それでも見る...