気管支喘息
参考
発作強度の判定基準 (JPGL 2020)
- | - | 小発作 | 中発作 | 大発作 | 呼吸不全 |
---|---|---|---|---|---|
主要所見 | - | - | - | - | - |
症状 | 興奮状況 | 平静 | 平静 | 興奮 | 錯乱 |
- | 意識 | 清明 | 清明 | やや低下 | 低下 |
- | 会話 | 文で話す | 句で区切る | 一語区切り~不能 | 不能 |
- | 起坐呼吸 | 横になれる | 座位を好む | 前かがみになる | - |
身体所見 | 喘鳴 | 軽度 | 軽度 | 著明 | 減少または消失 |
- | 陥没呼吸 | なし~軽度 | 〃 | 著明 | - |
- | チアノーゼ | なし | なし | あり | - |
- | SpO2(室内気) | ≧96% | 92~95% | ≦91% | - |
参考所見 | - | - | - | - | - |
身体所見 | 呼気延長 | 呼気時間が吸気の2倍未満 | - | 呼気時間が吸気の2倍以上 | - |
- | 呼吸数 | 正常~軽度増加 | - | 増加 | 不定 |
(参考) 年齢別標準呼吸数 | 0-1歳:30-60 | ||||
- | 1-3歳:20-40 | ||||
- | 3-6歳:20-30 | ||||
- | 6-15歳:15-30 | ||||
- | 15歳-:10-30 | ||||
PEF | (吸入前) | >60% | 30~60% | <30% | 測定不能 |
- | (吸入後) | >80% | 50~80% | <50% | 測定不能 |
PaCO2 | - | <41mmHg | 〃 | 41~60mmHg | >60mmHg |
発作時の対応 (JPGK 2020 より)
- 家庭での対応
- 「強い喘息発作のサインがある場合」(大発作・呼吸不全に該当) → 直ちに医療機関を受診する。β刺激薬があれば吸入する。
- 「強い喘息発作のサインがない場合」(小-中発作に相当) → 頓用βの吸入または内服し、吸入は15分後・内服は30分後に効果を評価。
- 貼付薬は即効性がないため不適切
- 症状消失 → β刺激薬(吸入・内服・貼付)を数日間使用する。
- 改善したがまだ症状あり → 再度吸入、内服・貼付薬は不可
- 変化なしまたは悪化 → 受診へ
- 小発作
- β刺激薬の吸入 ( 生理食塩水 or DSCG 2 mL + ベネトリン or メプチン)
- 換気血流不均衡を増悪させないように、SpO2 <95%であれば、酸素吸入を併用しながら吸入薬を使用することが望ましい。
- メプチンエアー + pMDIも可
- 乳幼児: 0.3mL, 学童以上: 0.3-0.5mL (ただし、0.3mLを超えると保険適応外)
- β刺激薬の吸入 ( 生理食塩水 or DSCG 2 mL + ベネトリン or メプチン)
- 中発作
- SpO2 <95%であれば酸素投与を検討。
- 2-3時間を目安にし、その後は入院を考慮
- β刺激薬の吸入 ( 同上 ) 1-3回, 20-30分毎
- 改善認めなければ → ステロイド投与、アミノフィリン(考慮)、β刺激薬吸入 1-2時間ごと
- それでも改善認めなければ → 大発作の治療プロトコルへ
- 大発作・呼吸困難(意識障害なし)
- 入院
- SpO2 >95%となるように酸素投与
- 大発作以上では動脈血液ガス分析を
- β刺激薬反復、初回3回は 20-30分ごと、その後は1-2時間毎に。
- もしくは、イソプロテレノール持続吸入
- 生理食塩水 500mL + アスプール 0.5% 2-5mL, 10mLまで増量可
- アスプールは0.5%と1.0%があるので要注意。どうしてもおいてない場合はプロタノールLを使用(保険適応なし)
- プロタノールL 0.02%はl体のみでd体が含まれていないので、半量で同等の効果が得られる(10-25mL)。
- 心電図モニタ必須
- FiO2 50%, 10L/minで開始 (インスピロン参照)
- 30分後に効果判定、効果不十分なら人工呼吸管理を考慮
- 相模原ではメプチン持続 {: .scope-kcrt}
- ステロイド投与
- 輸液
- アミノフィリン持続(考慮)
- 入院加療
- 改善なければ下記へ
- 呼吸困難(意識障害あり)
- 気管内挿管
- ステロイド投与(以下のいずれか)
薬剤 | 初回投与 | 定期投与 |
---|---|---|
静脈内 | ||
HDC | 5mg/kg | 5mg/kg q6-8hr |
PSL, mPSL | 0.5-1.0mg/kg | 0.5-1.0mg/kg q6-12hr |
経口 | ||
PSL | - | 1-2mg/kg/day 1x-3x |
DEX, VET syr. | - | 0.05-0.1mg/kg/day 1x-2x |
検査
- JPGL 2017
検査 | 喘息診断の補助となる所見 | 診断時 | フォローアップ時 |
---|---|---|---|
フローボリューム | 1秒率(FEV1.0%) < 80%, 1秒量 <80%, V̇50, V̇25低下 | 実施することが望ましい | 毎回の受診時 |
可逆性 | FEV1改善>12% | 実施することが望ましい | 数か月に1回 |
PEFモニタリング | 日内変動 >20%, 自己最良値から20%低下 | ー | 定期的に実施 |
FeNO | NO >35bpm | 可能ならば実施 | 可能ならば実施 |
運動負荷試験 | FEV1の低下が最大>15% | 可能ならば実施 | 可能ならば実施 |
血清総IgE | 高値 | 実施することが望ましい | ー |
末梢血好酸球 | >300/uL | 実施することが望ましい | 悪化時には実施 |
ダニ特異的IgE | 感作 | 実施することが望ましい | ー |
ペット、真菌、花粉特異的IgE | 多種吸入アレルゲン感作 | 実施することが望ましい | ー |
喀痰検査 | Eos. >5% | 可能ならば実施 | 可能ならば実施 |
- JPGL 2020
分類 | 検査項目 | 判定基準 | 診断時 | フォローアップ時 |
---|---|---|---|---|
症状 | 質問票 | - | ○ | 毎回の受診時 |
生理検査 | フローボリューム | 1秒率(FEV1.0%) < 80%, %1秒量 <80%, V̇50, V̇25低下 | ○ | 毎回の受診時 |
- | 可逆性 | FEV1改善>12% | ○ | 数か月に1回 |
- | PEF | 日内変動 >20%, 自己最良値から20%低下 | ー | 自宅でモニタリング |
- | FeNO | NO >35bpm | 可能なら | 可能なら |
- | 運動負荷試験 | FEV1の低下が最大>15% | 可能なら | 可能なら |
検体検査 | 血清総IgE | 高値 | ○ | ー |
- | 末梢血好酸球 | >300/uL | ○ | ○ |
- | ダニ特異的IgE | 全例 | ||
- | ペット、真菌、花粉特異的IgE | 症例により | ー | |
- | 喀痰検査 | Eos. >5% | 可能なら | 可能なら |
- PEF (日本小児アレルギー雑誌 2001; 15: 297-36)
- male[L/min] = 77.0+64.53*Ht[m]3+0.4795*age2
- female[L/min] = -209.0 + 210.4 * Ht[m] + 6.463*age
- スパイロメトリー基準値 2008 日本小児呼吸器疾患学会肺機能委員会
コントロール
重症度分類
重症度 | JPGL 2020 小児 |
---|---|
間欠型 | 年に数回、季節性に咳嗽、軽度呼気性喘鳴 |
- | 時に呼吸困難を伴うが、短時間作用性β2刺激薬頓用で短期間で改善し、持続しない |
軽症持続型 | 症状:咳嗽、軽度呼気性喘鳴が 1 回/月~ 1 回/週 |
- | 時に呼吸困難を伴うが、持続は短く日常生活障害は少ない 、 |
中等症持続型 | 症状:咳嗽、軽度呼気性喘鳴が 1 回/週以上、毎値には持続しない。 |
- | 時に大・中発作となり日常生活・が障害される 睡眠が傷害される |
重症持続型 | 症状:咳嗽・呼気性喘鳴が毎日持続する。 |
- | 週に1-2回、中・大発作となり日常生活や睡眠が傷害される。 |
症状のみの重症度 | ステップ1 | ステップ2 | ステップ3 | ステップ4 |
---|---|---|---|---|
間欠型 | 間欠型 | 軽症持続型 | 中等症持続型 | 重症持続型 |
軽症持続型 | 軽症持続型 | 中等症持続型 | 重症持続型 | 重症持続型 |
中等症持続型 | 中等症持続型 | 重症持続型 | 重症持続型 | 最重症持続型 |
重症持続型 | 重症持続型 | 重症持続型 | 重症持続型 | 最重症持続型 |
- DSCG:クロモグリク酸ナトリウム
-
SFC:サロメテロールキシナホ酸塩・フルチカゾンプロピオン酸エステル配合剤 (5歳以上の適応)
- 長時間作用性β2刺激薬ドライパウダー定量吸入器DPI: 自力吸入可能な5歳以上が適応
- SFCへの変更に際してはその他の長時間作用性β2刺激薬は中止する。
- SFCと吸入ステロイドの併用は可能であるが、吸入ステロイドの総量は指定範囲を守る。
- 治療ステップ3の治療でコントロール困難な場合は喘息専門医への紹介が望ましい。
- BADGER study: 6-18歳を対象にFP 100-100からのステップアップを比較検討 → LABA (FP100-100 + LABA 50-50): 4.5割, FP 250-250: 2.8割, LTRA: 2.9割 が改善
吸入ステロイド
(ug/day) | 低用量 | 中用量 | 高用量 |
---|---|---|---|
FP, BDP, CIC | -100 | -200 | -400 (小児適応外) |
BUD | -200 | -400 | -800 |
BIS | -250 | -500 | -1000 |
- FP: フルチカゾン フルタイド(pMDI, DPI, DPI)
- BDP: ベクロメタゾン キュバール(pMDI)
- CIC: シクレソニド オルベスコ(pMDI)
- BUD: ブデソニド パルミコート(DPI)
- BIS: ブデゾニド吸入懸濁液 パルミコート(吸入)
- SFC(FP/SLM): キシナホ酸サルメテロール(SLM) 50mcg +フルチカゾン(FP) 100mcg アドエア(pMDI, DPI)
- FFC(FP/FM): FP 50/FM 5 フルティフォーム pMDI
- 詳しくは吸入薬参照
乳糖含有
- FP DPI (ロタ・ディスカス), SFC DPIは乳糖含有。
- パルミコートタービュヘイラーは乳糖添加なし
モノクロナール抗体
- 生物学的製剤を参照
Modified Asthma Predictive Index
- Primary
- ≥4 wheezing episodes in a year
- AND
- Secondary
- At least 1 major:
- Parental physician-diagnosed asthma
- Physician-diagnosed atopic dermatitis
- Allergic sensitization to at least one aeroallergen
- OR
- At least 2 minor:
- Wheezing unrelated to colds
- Eosinophils ≥4% in circulation
- Allergic sensitization to milk, egg, or peanuts
- At least 1 major:
治療への反応性が悪い時
- 治療への反応性が悪い時 (もしくは喘息と思われるがエピソードが喘息っぽくない時) 下記検査を考慮する
- RF, MPO-ANCA, PR3-ANCA, アスペルギルスIgE/IgG, 胸部CT
- Churg-Strauss
- MPO-ANCA 50-70%で陽性
- CRP, WBC, SERが上がる
- Eos.が10%を超えることも
- CT画像
- 必要ならば結核の鑑別も