気管支喘息

1999-01-01 00:00 / last update: 2022-03-11 21:30 by kcrt

 

気管支喘息

参考

発作強度の判定基準 (JPGL 2020)

- - 小発作 中発作 大発作 呼吸不全
主要所見 - - - - -
症状 興奮状況 平静 平静 興奮 錯乱
- 意識 清明 清明 やや低下 低下
- 会話 文で話す 句で区切る 一語区切り~不能 不能
- 起坐呼吸 横になれる 座位を好む 前かがみになる -
身体所見 喘鳴 軽度 軽度 著明 減少または消失
- 陥没呼吸 なし~軽度 著明 -
- チアノーゼ なし なし あり -
- SpO2(室内気) ≧96% 92~95% ≦91% -
参考所見 - - - - -
身体所見 呼気延長 呼気時間が吸気の2倍未満 - 呼気時間が吸気の2倍以上 -
- 呼吸数 正常~軽度増加 - 増加 不定
(参考) 年齢別標準呼吸数 0-1歳:30-60        
- 1-3歳:20-40        
- 3-6歳:20-30        
- 6-15歳:15-30        
- 15歳-:10-30        
PEF (吸入前) >60% 30~60% <30% 測定不能
- (吸入後) >80% 50~80% <50% 測定不能
PaCO2 - <41mmHg 41~60mmHg >60mmHg

発作時の対応 (JPGK 2020 より)

  • 家庭での対応
    • 「強い喘息発作のサインがある場合」(大発作・呼吸不全に該当) → 直ちに医療機関を受診する。β刺激薬があれば吸入する。
    • 「強い喘息発作のサインがない場合」(小-中発作に相当) → 頓用βの吸入または内服し、吸入は15分後・内服は30分後に効果を評価。
      • 貼付薬は即効性がないため不適切
      • 症状消失 → β刺激薬(吸入・内服・貼付)を数日間使用する。
      • 改善したがまだ症状あり → 再度吸入、内服・貼付薬は不可
      • 変化なしまたは悪化 → 受診へ
  • 小発作
    • β刺激薬の吸入 ( 生理食塩水 or DSCG 2 mL + ベネトリン or メプチン)
      • 換気血流不均衡を増悪させないように、SpO2 <95%であれば、酸素吸入を併用しながら吸入薬を使用することが望ましい。
      • メプチンエアー + pMDIも可
    • 乳幼児: 0.3mL, 学童以上: 0.3-0.5mL (ただし、0.3mLを超えると保険適応外)
  • 中発作
    • SpO2 <95%であれば酸素投与を検討。
    • 2-3時間を目安にし、その後は入院を考慮
    • β刺激薬の吸入 ( 同上 ) 1-3回, 20-30分毎
    • 改善認めなければ → ステロイド投与、アミノフィリン(考慮)、β刺激薬吸入 1-2時間ごと
    • それでも改善認めなければ → 大発作の治療プロトコルへ
  • 大発作・呼吸困難(意識障害なし)
    • 入院
    • SpO2 >95%となるように酸素投与
    • 大発作以上では動脈血液ガス分析を
    • β刺激薬反復、初回3回は 20-30分ごと、その後は1-2時間毎に。
    • もしくは、イソプロテレノール持続吸入
      • 生理食塩水 500mL + アスプール 0.5% 2-5mL, 10mLまで増量可
      • アスプールは0.5%と1.0%があるので要注意。どうしてもおいてない場合はプロタノールLを使用(保険適応なし)
        • プロタノールL 0.02%はl体のみでd体が含まれていないので、半量で同等の効果が得られる(10-25mL)。
      • 心電図モニタ必須
      • FiO2 50%, 10L/minで開始 (インスピロン参照)
      • 30分後に効果判定、効果不十分なら人工呼吸管理を考慮
      • 相模原ではメプチン持続 {: .scope-kcrt}
    • ステロイド投与
    • 輸液
    • アミノフィリン持続(考慮)
    • 入院加療
    • 改善なければ下記へ
  • 呼吸困難(意識障害あり)
    • 気管内挿管
  • ステロイド投与(以下のいずれか)
薬剤 初回投与 定期投与
静脈内    
HDC 5mg/kg 5mg/kg q6-8hr
PSL, mPSL 0.5-1.0mg/kg 0.5-1.0mg/kg q6-12hr
  ガイドラインでは10-30min. div. (2017) 数分でiv. or 30 min程度でdiv. (2020)  
経口    
PSL - 1-2mg/kg/day 1x-3x
DEX, VET syr. - 0.05-0.1mg/kg/day 1x-2x

検査

  • JPGL 2017
検査  喘息診断の補助となる所見  診断時  フォローアップ時 
フローボリューム  1秒率(FEV1.0%) < 80%, 1秒量 <80%, V̇50, V̇25低下  実施することが望ましい  毎回の受診時 
可逆性  FEV1改善>12%  実施することが望ましい  数か月に1回 
PEFモニタリング  日内変動 >20%, 自己最良値から20%低下  ー  定期的に実施 
FeNO  NO >35bpm  可能ならば実施  可能ならば実施 
運動負荷試験  FEV1の低下が最大>15%  可能ならば実施  可能ならば実施 
血清総IgE  高値  実施することが望ましい  ー 
末梢血好酸球  >300/uL  実施することが望ましい  悪化時には実施 
ダニ特異的IgE  感作  実施することが望ましい  ー 
ペット、真菌、花粉特異的IgE  多種吸入アレルゲン感作  実施することが望ましい  ー 
喀痰検査  Eos. >5%  可能ならば実施  可能ならば実施
  • JPGL 2020
分類 検査項目 判定基準 診断時 フォローアップ時
症状 質問票 - 毎回の受診時
生理検査 フローボリューム 1秒率(FEV1.0%) < 80%, %1秒量 <80%, V̇50, V̇25低下 毎回の受診時
- 可逆性  FEV1改善>12%  数か月に1回 
- PEF 日内変動 >20%, 自己最良値から20%低下 自宅でモニタリング
- FeNO  NO >35bpm  可能なら  可能なら 
- 運動負荷試験  FEV1の低下が最大>15%  可能なら  可能なら 
検体検査 血清総IgE 高値
- 末梢血好酸球  >300/uL 
- ダニ特異的IgE   全例  
- ペット、真菌、花粉特異的IgE   症例により
- 喀痰検査  Eos. >5%  可能なら  可能なら
  • PEF (日本小児アレルギー雑誌 2001; 15: 297-36)
    • male[L/min] = 77.0+64.53*Ht[m]3+0.4795*age2
    • female[L/min] = -209.0 + 210.4 * Ht[m] + 6.463*age
  • スパイロメトリー基準値 2008 日本小児呼吸器疾患学会肺機能委員会

コントロール

重症度分類
重症度  JPGL 2020 小児
間欠型 年に数回、季節性に咳嗽、軽度呼気性喘鳴
- 時に呼吸困難を伴うが、短時間作用性β2刺激薬頓用で短期間で改善し、持続しない
軽症持続型 症状:咳嗽、軽度呼気性喘鳴が 1 回/月~ 1 回/週
- 時に呼吸困難を伴うが、持続は短く日常生活障害は少ない 、
中等症持続型 症状:咳嗽、軽度呼気性喘鳴が 1 回/週以上、毎値には持続しない。
- 時に大・中発作となり日常生活・が障害される 睡眠が傷害される
重症持続型 症状:咳嗽・呼気性喘鳴が毎日持続する。
- 週に1-2回、中・大発作となり日常生活や睡眠が傷害される。
症状のみの重症度 ステップ1 ステップ2 ステップ3 ステップ4
間欠型 間欠型 軽症持続型 中等症持続型 重症持続型
軽症持続型 軽症持続型 中等症持続型 重症持続型 重症持続型
中等症持続型 中等症持続型 重症持続型 重症持続型 最重症持続型
重症持続型 重症持続型 重症持続型 重症持続型 最重症持続型
  • DSCG:クロモグリク酸ナトリウム
  • SFC:サロメテロールキシナホ酸塩・フルチカゾンプロピオン酸エステル配合剤 (5歳以上の適応)

  • 長時間作用性β2刺激薬ドライパウダー定量吸入器DPI: 自力吸入可能な5歳以上が適応
  • SFCへの変更に際してはその他の長時間作用性β2刺激薬は中止する。
  • SFCと吸入ステロイドの併用は可能であるが、吸入ステロイドの総量は指定範囲を守る。
  • 治療ステップ3の治療でコントロール困難な場合は喘息専門医への紹介が望ましい。
  • BADGER study: 6-18歳を対象にFP 100-100からのステップアップを比較検討 → LABA (FP100-100 + LABA 50-50): 4.5割, FP 250-250: 2.8割, LTRA: 2.9割 が改善

吸入ステロイド

(ug/day) 低用量 中用量 高用量
FP, BDP, CIC -100 -200 -400 (小児適応外)
BUD -200 -400 -800
BIS -250 -500 -1000
  • FP: フルチカゾン フルタイド(pMDI, DPI, DPI)
  • BDP: ベクロメタゾン キュバール(pMDI)
  • CIC: シクレソニド オルベスコ(pMDI)
  • BUD: ブデソニド パルミコート(DPI)
  • BIS: ブデゾニド吸入懸濁液 パルミコート(吸入)
  • SFC(FP/SLM): キシナホ酸サルメテロール(SLM) 50mcg +フルチカゾン(FP) 100mcg アドエア(pMDI, DPI)
  • FFC(FP/FM): FP 50/FM 5 フルティフォーム pMDI
  • 詳しくは吸入薬参照

乳糖含有

  • FP DPI (ロタ・ディスカス), SFC DPIは乳糖含有。
  • パルミコートタービュヘイラーは乳糖添加なし

モノクロナール抗体

Modified Asthma Predictive Index

  • Primary
    • ≥4 wheezing episodes in a year
  • AND
  • Secondary
    • At least 1 major:
      • Parental physician-diagnosed asthma
      • Physician-diagnosed atopic dermatitis
      • Allergic sensitization to at least one aeroallergen
    • OR
    • At least 2 minor:
      • Wheezing unrelated to colds
      • Eosinophils ≥4% in circulation
      • Allergic sensitization to milk, egg, or peanuts

治療への反応性が悪い時

  • 治療への反応性が悪い時 (もしくは喘息と思われるがエピソードが喘息っぽくない時) 下記検査を考慮する
  • RF, MPO-ANCA, PR3-ANCA, アスペルギルスIgE/IgG, 胸部CT
  • Churg-Strauss
    • MPO-ANCA 50-70%で陽性
    • CRP, WBC, SERが上がる
    • Eos.が10%を超えることも
    • CT画像
  • 必要ならば結核の鑑別も

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