SIADH
- 抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH; Syndrome of inappropriate secretion of antidiuretic hormone)
- 血漿浸透圧に見合わない不適切なADHの作用亢進状態
- 水分の再吸収が促進 -> 循環血漿量は増加して希釈性の低ナトリウム血症を来す
診断基準
- I. 主症状
- 1. 特異的ではないが、倦怠感、食欲低下、意識障害などの低ナトリウム血症症状がある。
- 2. 脱水の所見を認めない。
- II. 検査所見
- 1. 低ナトリウム血症: 血清ナトリウム濃度は 135mEq/Lを下回る
- 2. 血漿バソプレシン値: 血清Na <
135mEq/Lで、血漿バソプレシン値が測定感度以上である
- ADHの分泌期待量 = 0.38×(血漿浸透圧-280)
- 3. 低浸透圧血症: 血漿浸透圧は 270mOsm/kgを下回る
- 4. 高張尿: 尿浸透圧は 300mOsm/kgを上回る
- 5. ナトリウム利尿の持続: 尿中ナトリウム濃度は 20mEq/L以上である。
- 6. 腎機能正常: 血清クレアチニンは1.2mg/dL以下である
- 7. 副腎皮質機能正常: 血清コルチゾールは 6ug/dL以上である
- III. 参考所見
- 1. 原疾患(中枢神経疾患や肺疾患など)の診断が確定していることが診断上の参考となる。
- 2. 血漿レニン活性は5ng/mL/hr以下であることが多い
- 3. 血清尿酸値は 5mg/dL以下であることが多い
- 4. 水分摂取を制限すると脱水が進行することなく低ナトリウム血症が改善する。
- 5. 尿中アクアポリン-2排泄は 300fmol/mgCr以上であることが多い(Ref: 100-200)
- 診断基準
- 確実例: IIで1-7の所見があり、かつ脱水の所見を認めないもの
治療
- 水分制限
- 1日の水分摂取量を不感蒸泄程度に制限する (乳児: WQ 30, 学童: 20mL/kg)
- 水分摂取は段階的に解除する
- 高張食塩水投与
- 神経症状を伴う場合や血清Na 120mEq/L以下の時は補正を図る
- 3% NaCl aq. 0.5-1.0mL/kg/hrで投与して頻回に血清Naを測定する
- 125mEq/Lまで到達したらその後は水分制限のみでも可
- 1日 10mEq/L以上 あるいは 0.5mEq/L/hr以上は橋中心髄鞘融解症(CPS)を起こす危険性が有る
- フロセミド
- 高張食塩水で血清Na濃度が上昇しない場合、併用する
- トルバプタン: 研究段階 → 2020.06 承認