内分泌
概要
- 小児の場合、45 mg/dL以下が低血糖とされる
- 発作時検体(クリティカルサンプル)の採取が大事
- 治療として、20% Tz 1mL/kgを投与して、補液を行いながら再度血糖を確認する。
低血糖の定義
- 高インスリン血性低血糖症の診断と治療ガイドライン
- 低血糖確実: 成人 ≦ 60mg/dL, 乳児期以降 ≦ 40mg/dL, 新生児 ≦ 30mg/dL
- 低血糖疑い: 低出生体重児〜乳児期以降小児 ≦ 45mg/dL
- 診断1: 低血糖(確実) + 交感神経刺激症状 / 中枢神経機能低下症状
- 診断2: 低血糖(疑い) + 臨床症状あり + グルコース投与での臨床症状改善
低血糖の原因
- 血糖の維持ができない
- グリコーゲン貯蔵や分解の異常: 低出生体重児・糖原病
- 糖新生の異常
- ケトン性低血糖症
- 糖新生関連酵素異常(フルクトース 1,6-ビスホスファターゼ欠損症、ピルビン酸カルボキシラーゼ欠損症、ホスホエナールピルビン酸カルボシキナーゼ欠損症、シトリン欠損症、グリセロールキナーゼ欠損症など)
- 脂肪酸酸化異常症
- 脂肪酸β異化異常症、カルニチン代謝異常症、ミトコンドリア病、二次性カルニチン欠乏症、ケトン体産生異常
- 糖代謝異常による反応性低血糖
- ガラクトース血症 (乳糖摂取時)、フルクトース不耐症 (果糖摂取時)
- 高インスリン血症、拮抗ホルモンの欠損
病歴
- インスリンや副腎・甲状腺に関する治療の有無
- 症状を起こした時間と、食事との時間間隔、最後の食事の内容
- ガラクトース含有食物摂取の直後: ガラクトキナーゼ欠損症, UDPガラクトース4エピメラーゼ欠損,
- フルクトース含有食物摂取の直後: 遺伝性フルクトース不耐症, FBPase, PEPCK
- 食後2時間: ダンピング症候群
- 食後4-6時間: 糖源病などのグリコーゲン分解異常
- 食後12-16時間: 脂肪酸β酸化異常症、糖新生の異常
- ダンピング症候群
採血
- 血糖
- 血液ガス
- アンモニア
- 遊離脂肪酸
- 血液ケトン体分画
- 乳酸・ピルビン酸
- インスリン
- コルチゾール
- ACTH
- GH・IGF-1
- TSH
- fT4
- 尿ケトン
- 保存検体として
- タンデムマススクリーニング用の濾紙血
- アミノ酸分析
- 尿中有機酸分析
- 落ち着いたら:食後の乳酸・ケトンの有無
治療
- 20% Tz 1mL/kg静注して補液を継続
- 摂食可能となれば摂食
- 血糖を30分後に確認
- 副腎不全を疑うエピソードがあればHDCを同時に投与する。
結果の解釈
インスリン
- 高インスリン血性低血糖症の診断と治療ガイドライン
- 高インスリン性低血糖の診断
- クリティカルサンプルで3つのうちいずれかひとつ
- 血中インスリンが2-5uIU/mLより高値
- 遊離脂肪酸が 1.5mmol/Lより低値
- βヒドロキシ酪酸が2.0mmol/Lより低値
- (新生児期はβヒドロキシ酪酸の低値は認めにくい)
- 補助診断として GIR が6-8を超える
- クリティカルサンプルで3つのうちいずれかひとつ
- 高インスリン性低血糖の治療
- GIR 6-8で開始し、血糖 ≧50を目標に補液調整
- 診断が確定している時はグルカゴン投与が効果あり
- 第1選択はジアゾキシド
- 1歳未満: 5-10mg/kg/day, max 20mg/kg/day
- 1歳以上: 3-5mg/kg/day
- 第2選択薬はオクトレオチド 2-5ug/kg/day sc. 3x-4x (あるいはcontinuous sc.), max 15ug/kg/day
- 一過性高インスリン血性低血糖の場合は治療不要の場合もある。
遊離脂肪酸・ケトン
- | 1-7歳 (n=27) | - | - | 7-15歳 (n=9) | - | - |
---|---|---|---|---|---|---|
median (10-90%tile) | 15hr | 20hr | 24hr | 15hr | 20hr | 24hr |
血糖 mg/dL | 79.2 (63.0-86.4) | 63.0 (50.4-77.4) | 59.4 (50.4-68.4) | 84.6 (79.2-88.2) | 77.4 (68.4-88.2) | 68.4 (54-77.4) |
遊離脂肪酸 mmol/L | 1.1 (0.6-1.5) | 1.7 (0.9-2.6) | 2.1 (1.1-2.8) | 0.7 (0.2-1.1) | 1.0 (0.6-1.3) | 1.4 (1.0-1.8) |
総ケトン体 mmol/L | 0.8 (0.15-2.0) | 2.4 (1.2-3.7) | 3.5 (2.2-5.8) | 0.2 (<0.1-0.5) | 0.6 (0.1-1.3) | 1.3 (0.7-3.7) |
3-OH酪酸 mmol/L | 0.6 (<0.1-0.9) | 1.8 (0.8-2.6) | 2.5 (1.7-3.2) | 0.1 (<0.1-0.3) | 0.4 (<0.1-0.8) | 0.9 (0.5-1.3) |
FFA/Ket | 2.2 (0.7-4.4) | 0.8 (0.4-1.5) | 0.6 (0.4-0.9) | 5.4 (1.9-10.0) | 2.5 (0.7-4.6) | 1.5 (0.5-2.0) |
- 飢餓時には、FFAもケトンもあがるのが普通!
- 遊離脂肪酸が 1.5mmol/Lより低値, βヒドロキシ酪酸が2.0mmol/Lより低値 → 高インスリン性低血糖
- 遊離脂肪酸 / 総ケトン体 > 5 → ミトコンドリアHMG-CoA合成酵素欠損症
- 遊離脂肪酸 / 総ケトン体 < 0.3 → サクシニルCoA:3-ケト酸CoA転移酵素欠損症
乳酸・ピルビン酸
- 乳酸 基準値: 3.0-17.0mg/dL
- 動脈血で複数回20-25mg/dLが続く場合は高乳酸血症の存在する可能性が高い
- ピルビン酸 基準値: 0.3-0.9mg/dL
- 小児科診療 2013 1(71) 71p
- | 食後 | - | - | 空腹20時間後 | - | - |
---|---|---|---|---|---|---|
- | 1M-1y | 1-7y | 7-15y. | 1M-1y | 1-7y | 7-15y. |
乳酸 mM | 2.34±0.54 | 1.38±0.32 | 1.23±0.17 | 1.28±0.49 | 1.10±0.50 | 0.76±0.24 |
L/P | 13.4±3.4 | 15.5±3.7 | 16.1±6.0 | 14.6±7.0 | 14.3±6.7 | 12.9±6.0 |
ケトン体 mM | 0.18±0.10 | <0.10 | <0.10 | 1.59±1.05 | 2.46±1.26 | 0.61±0.43 |
3-OHB/AA | <1 | <1 | <1 | 2.54±0.70 | 2.84±0.45 | 2.10±0.90 |
遊離脂肪酸 mM | - | - | - | 0.6-1.3 | 0.9-2.6 | 0.6-1.3 |
FFA/ケトン体 | - | - | - | 0.3-1.4 | 0.4-1.5 | 0.7-4.6 |
- L/P比はmMで計算する。
- 乳酸(分子量90.08), mg/dL=mM x 9, mM= mg/dL x 0.11
- ピルビン酸(分子量88.06), mg/dL=mM x 8, mM = mg/dL x 0.11
- L/P比: 通常正常は約10
- L/P比が高い(20以上)となると電子伝達系の異常(ミトコンドリア異常症など)が考えられる
- 血液中の乳酸・ピルビン酸は駆血・啼泣・運動で高値を示す
- 髄液中の乳酸・ピルビン酸は血中より若干高値との報告もあるがほぼ同じに考えてよい
- 髄液中の乳酸・ピルビン酸は採取条件による変動は少ない
- 血中Ala > 450uM, Ala/Lys > 3は重要
高乳酸血症の時期 | 空腹時低血糖 | ケトーシス | L/P | 3-OHB/AA | 疾患 |
---|---|---|---|---|---|
食後 | + | + 空腹時 | → | → | 糖原病 III, VI, VIII, IX、グリコーゲン合成酵素異常症 |
# | +/- | - | → | → | ピルビン酸脱水素酵素複合体異常症 |
# | +/- | + 食後 | ↑ | ↓ | ピルビン酸カルボキシラーゼ異常症, MC異常症 |
# | +/- | + 食後 | ↑ | ↑ | ミトコンドリア呼吸鎖異常症, TCAサイクル異常 |
空腹時 | + | + 空腹時 | → | → | 糖原病 I, FBPase異常症 |
# | + | - | → | → | 脂肪酸代謝異常 |