低身長精査入院プロトコル
入院時カルテ
- 入院中どっかで下垂体MRIを撮像
- 骨年齢
- 両親の身長
- 母親の初経
- 予測身長
- PH: father's(paternal) height
- MH: mother's height
- Boys
- Target Height = ( (PH+(MH+13) ) /2
- Target Range = TH ± 9
- Girls
- Target Height = ( (PH - 13)+ MH) /2
- Target Range = TH ± 8
- Tanner 分類
- 女児
- 乳房
- 第1度(思春期前)
- 第2度
- 乳房と乳頭が小さな隆起をつくり、乳輪も大きさを増す。乳腺が乳輪下に触知される。
- 第3度
- 乳房と乳輪が拡大する。乳輪は乳房と同一平面上にあり、輪郭は明確でない。
- 第4度
- 乳房の上に乳頭と乳輪がさらに高まって隆起する。
- 日本人では4度のまま成人に達する例がかなり存在する
- 第5度(成人型)
- 成熟。乳頭だけが隆起して、乳輪は再び乳房と同一平面上となる。
- 陰毛
- 第1度(思春期前)
- 陰毛は無し
- 第2度
- 長くやや黒さを増したうぶ毛様の、真っ直ぐ又はややカールした(主に大陰唇にそってみられる)陰毛を認める
- 第3度
- 陰毛は黒さを増し、硬くカールし、量も増加(写真に撮れる程度)。まばらに恥骨結合部に広がる。
- 第4度
- 陰毛は硬くカールして、量、濃さを増し成人様となるが、大腿部中央部までは広がらない。
- 第5度(成人型)
- 陰毛は大腿部まで広がり、逆三角形となる
- 第1度(思春期前)
- 乳房
- 男児
- 第1度(思春期前)
- 陰茎、陰嚢、精巣:未発達
- 陰毛:無し。
- 第2度
- 陰茎:ほとんど変化なし。(幼児型)
- 陰嚢、精巣:大きさを増し、陰嚢はやや赤みを帯びる。
- 陰毛:まばら、長く柔らかい、ややカールする。
- 第3度
- 陰茎:肥大がみられる。
- 精巣と陰嚢:さらに大きくなる。
- 陰毛:色は濃く、硬くなり、カールする(写真で撮れる)。
- 第4度
- 陰茎:太く大きくなり、亀頭も肥大する。
- 陰嚢、精巣:さらに大きくなり、陰嚢は色素を増す。
- 陰毛:成人に近くなるが、まばらで、大腿部に及ばない。
- 第5度(成人型)
- 陰茎、陰嚢、精巣:成人様に成熟する。
- 陰毛:濃く密生する。大腿部まで及ぶ。
- 第1度(思春期前)
- 女児

1
- 身長・体重・体脂肪(小児科外来で)・血圧測定
- 手根骨レントゲン撮影
- ルート確保及び採血
- CBC
- Na, K, Cl, Ca, IP, AST, ALT, LDH, ALP, BUN, Cre
- T.Chol., HDL-Chol., LDL-Chol., TG
- FT3, FT4, TSH
- IGF-1 or IGFBP-3 (どちらか片方、1回/月しか測れない)
- LH, FSH, E2・プロゲステロン(女児), テストステロン(男児), 女児は染色体(45XOチェック)
- ヘパリンロック(ルート確保時・午前0時)
2
- 朝食は欠食、水・お茶飲み可
- 起床後安静
- 早朝尿提出
- 一般検尿・尿中GH・尿Cre
- クロニジン負荷試験
- 選択的α2受容体アゴニスト
- 機序:アドレナリンα2受容体刺激→GHRH放出→GH放出
- クロニジン(カタプレス) 0.1mg/m2 処方, 最大 0.15mgまでを水で内服
- 副作用:
- 眠気 内服60分後に眠たくなる、検査後も眠気が続くことを説明
- 睡眠によるGH分泌の影響を除外するため可能なら眠らずに
- 降圧薬であるが、試験量では問題ない(ただし血圧チェック!)
- 腎代謝なので腎機能チェック
- 開始前にNS 100mLボトルをつなぎ30mL/hr程度で開始
- 採血:投与前、投与後30, 60, 90, 120min. あわせて血圧測定
- 測定項目: GHのみ
- preのみ T.Chol., HDL-Chol., LDL-Chol., TGも
- 終了後はヘパリンロックして食事摂取可
- 午前0時にロック
3
- 朝食は欠食、水・お茶飲み可
- 起床後安静
- L-DOPA負荷試験
- 機序:GHRH分泌促進・ソマトスタチン分泌抑制
- L-DOPA(ドパール) 10mg/kg 処方, 最大 500mgを水で内服
- 副作用:
- 内服30分後嘔気が出現することが多い。一過性で90分後には消失
- 開始前にNS 100mLボトルをつなぎ30mL/hr程度で開始
- 採血:投与前、投与後30, 60, 90, 120min.
- 測定項目:GHのみ
- プロラクチンも測れる
- 終了後はヘパリンロックして食事摂取可
- 午前0時にロック
4
- 朝食は欠食、水・お茶飲み可
- 起床後安静
- 三者負荷試験 LH-RH・ヒシダリン(TRH)・インスリン
- LH-RH 3ug/kg + NS 10mL ゆっくり i.v. (MAX: 100ug)
- ヒシダリン 10ug/kg + NS 10mL 数分かけて i.v. i.v.中に嘔気有り MAX 500ug
- ヒューマリンR(静注) 0.1U/kg を整理食塩水10mL程度にのばしてゆっくりiv.
- 必ず希釈して正確に投与量を測る
- ただし、以下の場合は0.05u/kg(半量)とする
- 副腎皮質機能低下が疑われる
- FBS≦60mg/dl
- GH完全欠損が疑われる
- 採血:投与前、投与後15, 30, 60, 90, 120min.
- 測定項目:TSH, PRL, LH, FSH, 血糖・ACTH(*)・コルチゾール,
GH
- ACTHはEDTA-2Na入り試験管氷冷して検査室へ
- 痙攣等がありインスリン負荷を行わない場合はGH, コルチゾール, 血糖の測定は不要
- プレーン 4mL + 院内生化(TSH) 1mL
- 原法は15min.は血糖のみ(GH, ACTH, コルチゾールは測らない)
- 毎回血糖も測る
- 投与後15分後の血糖が
- 血糖が50mg/dL以下または投与前の50%以下に降下している必要がある
- ≦50mg/dLとなっていれば20% Tz 20mL iv.
- (30分後の採血でも≦100mg/dLなら更に20% Tz 20mL iv.)
- かならずベッドサイドに20%Tz用意しておく、意識障害・けいれんあれば直ちに投与
- もともとのマニュアルでは意識障害・痙攣が見られたら20% Tz 20-40mLをただちに静注
- 測定項目:TSH, PRL, LH, FSH, 血糖・ACTH(*)・コルチゾール,
GH
- インスリン負荷試験 (0.1u/kg)
- 機序:低血糖→ソマトスタチン分泌抑制→GH分泌
- ヒューマリンR(静注) 0.1U/kg を整理食塩水10mL程度にのばしてゆっくりiv.
- 必ず希釈して正確に投与量を測る
- ただし、以下の場合は0.05u/kg(半量)とする
- 副腎皮質機能低下が疑われる
- FBS≦60mg/dl
- GH完全欠損が疑われる
- 痙攣の既往のある児では禁忌!
- 副作用:
- 当然低血糖が起こる。60分後までは頻回に血糖測定
- 開始前にNS 100mLボトルをつなぎ30mL/hr程度で開始
- 採血:投与前、投与後30, 60, 90, 120min.
- 測定項目:TSH, PRL, LH, FSH, 血糖・ACTH(*)・コルチゾール, GH
- ACTHはEDTA-2Na入り試験管氷冷して検査室へ
- 投与後15分後に血糖のみチェック
血糖が50mg/dL以下または投与前の50%以下に降下している必要がある
- ≦50mg/dLとなっていれば20% Tz 20mL iv.
- 30分後の採血でも≦100mg/dLなら更に20% Tz 20mL iv.
- かならずベッドサイドに20%Tz用意しておく、意識障害・けいれんあれば直ちに投与
- 終了後はヘパリンロックして食事摂取可
- 午前0時にロック
5
- 朝食は欠食、水・お茶飲み可
- 起床後安静
- アルギニン負荷試験
- 機序:ソマトスタチン分泌抑制
- L-アルギニン静注 0.5g/kg(アルギニン注 5mL/kg), 最大量300mL を30mで div.
- 開始前にNS 100mLボトルをつなぎ30mL/hr程度で開始
- 採血:投与前、投与開始後30分(=投与終了時), 60, 90, 120min.
- 項目:GH
- 血糖・インスリンも測れる
- それ以降に検査がなければ終了後抜針
- オプション: グルカゴン負荷試験
グルカゴン負荷試験
- 朝食は欠食、水・お茶飲み可
- 起床後安静
- グルカゴン負荷試験
- 機序:グルカゴン投与→血糖上昇→反張性低血糖→GH分泌
- グルカゴン皮下注 0.03mg/kg, 最大 1.0mg(1V)
- 開始前にNS 100mLボトルをつなぎ30mL/hr程度で開始
- 採血:投与前、投与後30, 60, 90, 120, 150, 180 min.
- 項目:GH
- 血糖・インスリンも測る
- 血糖は60-120分に低くなるので要注意
- プロプラノロール(β-blocker)を加えて作用を増強させるプロトコルもあるが、公式基準には採用されていない
- それ以降に検査がなければ終了後抜針
結果
下垂体
- 下垂体腺腫の有無、後葉(T1 high)があるか、下垂体柄をよく見る。
GH
- 成長障害(Ht≦-2.0SD or ΔHtSD≦-1.5SDが2年間続く) + 負荷試験2種類で分泌低下
- 成長障害(Ht≦-2.0SD or ΔHtSD≦-1.5SDが2年間続く) + 頭蓋内器質性疾患や他の下垂体ホルモン分泌不全 + 負荷試験1種類で分泌低下
- 低身長はなくてもGHDが原因と考えられる症候性低血糖 + 負荷試験1種類
- リコンビナント: 頂値が6ng/mL以下で分泌不全、GHRP-2では16ng/mL以下
-
その他のキット:
頂値が10ng/mL以下→現在は補正して 6ng/mLでチェック- 第一IRMA (GHキット第一) : Y=0.63X - 0.04
- 東ソーIEMA (Eテスト[TOSOH] II [HGH]) : Y=1.21X - 0.15
- 日立化成CLEIA (ヒタザイムCL) : Y = 1.17X + 0.57
- ヤトロンCLEIA (イムライズhGH) : Y = 1.27X + 0.17
- ベックマン・コールターCLEIA (アクセスhGH) : Y = 1.20 X + 0.22
- 協和CLEIA (アレグロライトHGH) : Y = 1.24 X - 0.30 </del>
- アクセスhGH: Y = 1.4 X
TSH
- 15分で6uU/mL以上となる。
- 30分で最大(10~35μU/ml)。120分前後で前値に戻る。1
- 15〜30分後に女性で6〜30(平均16.8)μU/ml、男性で3.5〜15(平均7.1)μU/mlになる。
- 女性で30μU/ml以上、男性で15μU/ml以上になるのは過剰反応。
- TSHの頂値が60分以降になるのは遷延反応。
- 視床下部性甲状腺機能低下症を疑う時は、TRH負荷前と負荷後120分にT3を同時に測定し、TSH増加に対するT3の反応性を検討する。生物活性の低いTSHが存在する場合、TSHが上昇してもT3の上昇が見られない。正常であれば130%以上に増える。
LH, FSH
- 性腺ホルモン参照。
PRL
- 15~30分で最大、前値の2倍以上に増加、120分前後で前値に戻る。視床下部障害で、PRLの頂値が60分以降となる遅延反応を示すことあり。
- 5歳男児基礎値は 1.6~14.8ng/ml(成人男性 1.5~9.7、女性 1.4~14.6)2
- 成人頂値15分 mean±SD = 男14.6±30.0, 女 30.2±64.8
ACTH, コルチゾール
- 副腎機能が正常であれば、ACTHは30-60分で頂値をとり、前値の2倍以上となる。
- コルチゾールはACTHにやや遅れて60分で頂値をとり、前値の2倍以上で15-30ug/dL程度まで上昇する。血糖が 40mg/dl 以下であったにも関わらずコルチゾールのピークが 18μg/dl 以下であった場合は異常。