低身長検査入院

1999-01-01 00:00 by kcrt

 

低身長精査入院プロトコル

入院時カルテ

  • 入院中どっかで下垂体MRIを撮像
  • 骨年齢
  • 両親の身長
  • 母親の初経
  • 予測身長
    • PH: father's(paternal) height
    • MH: mother's height
    • Boys
      • Target Height = ( (PH+(MH+13) ) /2
      • Target Range = TH ± 9
    • Girls
      • Target Height = ( (PH - 13)+ MH) /2
      • Target Range = TH ± 8
  • Tanner 分類
    • 女児
      • 乳房
        • 第1度(思春期前)
        • 第2度
          • 乳房と乳頭が小さな隆起をつくり、乳輪も大きさを増す。乳腺が乳輪下に触知される。
        • 第3度
          • 乳房と乳輪が拡大する。乳輪は乳房と同一平面上にあり、輪郭は明確でない。
        • 第4度
          • 乳房の上に乳頭と乳輪がさらに高まって隆起する。
          • 日本人では4度のまま成人に達する例がかなり存在する
        • 第5度(成人型)
          • 成熟。乳頭だけが隆起して、乳輪は再び乳房と同一平面上となる。
      • 陰毛
        • 第1度(思春期前)
          • 陰毛は無し
        • 第2度
          • 長くやや黒さを増したうぶ毛様の、真っ直ぐ又はややカールした(主に大陰唇にそってみられる)陰毛を認める
        • 第3度
          • 陰毛は黒さを増し、硬くカールし、量も増加(写真に撮れる程度)。まばらに恥骨結合部に広がる。
        • 第4度
          • 陰毛は硬くカールして、量、濃さを増し成人様となるが、大腿部中央部までは広がらない。
        • 第5度(成人型)
          • 陰毛は大腿部まで広がり、逆三角形となる
    • 男児
      • 第1度(思春期前)
        • 陰茎、陰嚢、精巣:未発達
        • 陰毛:無し。
      • 第2度
        • 陰茎:ほとんど変化なし。(幼児型)
        • 陰嚢、精巣:大きさを増し、陰嚢はやや赤みを帯びる。
        • 陰毛:まばら、長く柔らかい、ややカールする。
      • 第3度
        • 陰茎:肥大がみられる。
        • 精巣と陰嚢:さらに大きくなる。
        • 陰毛:色は濃く、硬くなり、カールする(写真で撮れる)。
      • 第4度
        • 陰茎:太く大きくなり、亀頭も肥大する。
        • 陰嚢、精巣:さらに大きくなり、陰嚢は色素を増す。
        • 陰毛:成人に近くなるが、まばらで、大腿部に及ばない。
      • 第5度(成人型)
        • 陰茎、陰嚢、精巣:成人様に成熟する。
        • 陰毛:濃く密生する。大腿部まで及ぶ。



1

  • 身長・体重・体脂肪(小児科外来で)・血圧測定
  • 手根骨レントゲン撮影
  • ルート確保及び採血
    • CBC
    • Na, K, Cl, Ca, IP, AST, ALT, LDH, ALP, BUN, Cre
    • T.Chol., HDL-Chol., LDL-Chol., TG
    • FT3, FT4, TSH
    • IGF-1 or IGFBP-3 (どちらか片方、1回/月しか測れない)
    • LH, FSH, E2・プロゲステロン(女児), テストステロン(男児), 女児は染色体(45XOチェック)
  • ヘパリンロック(ルート確保時・午前0時)

2

  • 朝食は欠食、水・お茶飲み可
  • 起床後安静
  • 早朝尿提出
  • 一般検尿・尿中GH・尿Cre
  • クロニジン負荷試験
    • 選択的α2受容体アゴニスト
    • 機序:アドレナリンα2受容体刺激→GHRH放出→GH放出
    • クロニジン(カタプレス) 0.1mg/m2 処方, 最大 0.15mgまでを水で内服
    • 副作用:
      • 眠気 内服60分後に眠たくなる、検査後も眠気が続くことを説明
      • 睡眠によるGH分泌の影響を除外するため可能なら眠らずに
      • 降圧薬であるが、試験量では問題ない(ただし血圧チェック!)
      • 腎代謝なので腎機能チェック
    • 開始前にNS 100mLボトルをつなぎ30mL/hr程度で開始
    • 採血:投与前、投与後30, 60, 90, 120min. あわせて血圧測定
      • 測定項目: GHのみ
      • preのみ T.Chol., HDL-Chol., LDL-Chol., TGも
      • 終了後はヘパリンロックして食事摂取可
      • 午前0時にロック

3

  • 朝食は欠食、水・お茶飲み可
  • 起床後安静
  • L-DOPA負荷試験
    • 機序:GHRH分泌促進・ソマトスタチン分泌抑制
    • L-DOPA(ドパール) 10mg/kg 処方, 最大 500mgを水で内服
    • 副作用:
      • 内服30分後嘔気が出現することが多い。一過性で90分後には消失
      • 開始前にNS 100mLボトルをつなぎ30mL/hr程度で開始
      • 採血:投与前、投与後30, 60, 90, 120min.
        • 測定項目:GHのみ
        • プロラクチンも測れる
      • 終了後はヘパリンロックして食事摂取可
      • 午前0時にロック

4

  • 朝食は欠食、水・お茶飲み可
  • 起床後安静
  • 三者負荷試験 LH-RH・ヒシダリン(TRH)・インスリン
    • LH-RH 3ug/kg + NS 10mL ゆっくり i.v. (MAX: 100ug)
    • ヒシダリン 10ug/kg + NS 10mL 数分かけて i.v. i.v.中に嘔気有り MAX 500ug
    • ヒューマリンR(静注) 0.1U/kg を整理食塩水10mL程度にのばしてゆっくりiv.
    • 必ず希釈して正確に投与量を測る
    • ただし、以下の場合は0.05u/kg(半量)とする
      • 副腎皮質機能低下が疑われる
      • FBS≦60mg/dl
      • GH完全欠損が疑われる
    • 採血:投与前、投与後15, 30, 60, 90, 120min.
      • 測定項目:TSH, PRL, LH, FSH, 血糖・ACTH(*)・コルチゾール, GH
        • ACTHはEDTA-2Na入り試験管氷冷して検査室へ
        • 痙攣等がありインスリン負荷を行わない場合はGH, コルチゾール, 血糖の測定は不要
      • プレーン 4mL + 院内生化(TSH) 1mL
      • 原法は15min.は血糖のみ(GH, ACTH, コルチゾールは測らない)
      • 毎回血糖も測る
      • 投与後15分後の血糖が
        • 血糖が50mg/dL以下または投与前の50%以下に降下している必要がある
        • ≦50mg/dLとなっていれば20% Tz 20mL iv.
        • (30分後の採血でも≦100mg/dLなら更に20% Tz 20mL iv.)
        • かならずベッドサイドに20%Tz用意しておく、意識障害・けいれんあれば直ちに投与
        • もともとのマニュアルでは意識障害・痙攣が見られたら20% Tz 20-40mLをただちに静注
  • インスリン負荷試験 (0.1u/kg)
    • 機序:低血糖→ソマトスタチン分泌抑制→GH分泌
    • ヒューマリンR(静注) 0.1U/kg を整理食塩水10mL程度にのばしてゆっくりiv.
    • 必ず希釈して正確に投与量を測る
    • ただし、以下の場合は0.05u/kg(半量)とする
      • 副腎皮質機能低下が疑われる
      • FBS≦60mg/dl
      • GH完全欠損が疑われる
      • 痙攣の既往のある児では禁忌!
    • 副作用:
      • 当然低血糖が起こる。60分後までは頻回に血糖測定
      • 開始前にNS 100mLボトルをつなぎ30mL/hr程度で開始
    • 採血:投与前、投与後30, 60, 90, 120min.
    • 測定項目:TSH, PRL, LH, FSH, 血糖・ACTH(*)・コルチゾール, GH
      • ACTHはEDTA-2Na入り試験管氷冷して検査室へ
      • 投与後15分後に血糖のみチェック 血糖が50mg/dL以下または投与前の50%以下に降下している必要がある
        • ≦50mg/dLとなっていれば20% Tz 20mL iv.
        • 30分後の採血でも≦100mg/dLなら更に20% Tz 20mL iv.
        • かならずベッドサイドに20%Tz用意しておく、意識障害・けいれんあれば直ちに投与
    • 終了後はヘパリンロックして食事摂取可
    • 午前0時にロック

5

  • 朝食は欠食、水・お茶飲み可
  • 起床後安静
  • アルギニン負荷試験
    • 機序:ソマトスタチン分泌抑制
    • L-アルギニン静注 0.5g/kg(アルギニン注 5mL/kg), 最大量300mL を30mで div.
    • 開始前にNS 100mLボトルをつなぎ30mL/hr程度で開始
    • 採血:投与前、投与開始後30分(=投与終了時), 60, 90, 120min.
    • 項目:GH
      • 血糖・インスリンも測れる
      • それ以降に検査がなければ終了後抜針
  • オプション: グルカゴン負荷試験

グルカゴン負荷試験

  • 朝食は欠食、水・お茶飲み可
  • 起床後安静
  • グルカゴン負荷試験
    • 機序:グルカゴン投与→血糖上昇→反張性低血糖→GH分泌
    • グルカゴン皮下注 0.03mg/kg, 最大 1.0mg(1V)
    • 開始前にNS 100mLボトルをつなぎ30mL/hr程度で開始
    • 採血:投与前、投与後30, 60, 90, 120, 150, 180 min.
    • 項目:GH
      • 血糖・インスリンも測る
      • 血糖は60-120分に低くなるので要注意
      • プロプラノロール(β-blocker)を加えて作用を増強させるプロトコルもあるが、公式基準には採用されていない
      • それ以降に検査がなければ終了後抜針

結果

下垂体

  • 下垂体腺腫の有無、後葉(T1 high)があるか、下垂体柄をよく見る。

GH

  • 成長障害(Ht≦-2.0SD or ΔHtSD≦-1.5SDが2年間続く) + 負荷試験2種類で分泌低下
  • 成長障害(Ht≦-2.0SD or ΔHtSD≦-1.5SDが2年間続く) + 頭蓋内器質性疾患や他の下垂体ホルモン分泌不全 + 負荷試験1種類で分泌低下
  • 低身長はなくてもGHDが原因と考えられる症候性低血糖 + 負荷試験1種類
  • リコンビナント: 頂値が6ng/mL以下で分泌不全、GHRP-2では16ng/mL以下
  • その他のキット: 頂値が10ng/mL以下→現在は補正して 6ng/mLでチェック

    • 第一IRMA (GHキット第一) : Y=0.63X - 0.04
    • 東ソーIEMA (Eテスト[TOSOH] II [HGH]) : Y=1.21X - 0.15
    • 日立化成CLEIA (ヒタザイムCL) : Y = 1.17X + 0.57
    • ヤトロンCLEIA (イムライズhGH) : Y = 1.27X + 0.17
    • ベックマン・コールターCLEIA (アクセスhGH) : Y = 1.20 X + 0.22
    • 協和CLEIA (アレグロライトHGH) : Y = 1.24 X - 0.30 </del>
    • アクセスhGH: Y = 1.4 X

TSH

  • 15分で6uU/mL以上となる。
  • 30分で最大(10~35μU/ml)。120分前後で前値に戻る。1
  • 15〜30分後に女性で6〜30(平均16.8)μU/ml、男性で3.5〜15(平均7.1)μU/mlになる。
  • 女性で30μU/ml以上、男性で15μU/ml以上になるのは過剰反応。
  • TSHの頂値が60分以降になるのは遷延反応。
  • 視床下部性甲状腺機能低下症を疑う時は、TRH負荷前と負荷後120分にT3を同時に測定し、TSH増加に対するT3の反応性を検討する。生物活性の低いTSHが存在する場合、TSHが上昇してもT3の上昇が見られない。正常であれば130%以上に増える。

LH, FSH

PRL

  • 15~30分で最大、前値の2倍以上に増加、120分前後で前値に戻る。視床下部障害で、PRLの頂値が60分以降となる遅延反応を示すことあり。
  • 5歳男児基礎値は 1.6~14.8ng/ml(成人男性 1.5~9.7、女性 1.4~14.6)2
  • 成人頂値15分 mean±SD = 男14.6±30.0, 女 30.2±64.8

ACTH, コルチゾール

  • 副腎機能が正常であれば、ACTHは30-60分で頂値をとり、前値の2倍以上となる。
  • コルチゾールはACTHにやや遅れて60分で頂値をとり、前値の2倍以上で15-30ug/dL程度まで上昇する。血糖が 40mg/dl 以下であったにも関わらずコルチゾールのピークが 18μg/dl 以下であった場合は異常。
  1. 小児内科 2000年5月号 

  2. 小児内科 2000年5月号 

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